大阪市立大学医学部附属病院では昭和39年から病棟で血液透析を行い、昭和41年6月に透析室を開設し、本格的に慢性腎不全治療としての血液透析を開始しました。開設当時は腎不全患者に血液透析を施行すること自体が非常に困難でありましたが、
めざましい医療機器の発展により血液透析の導入が外来で十分行えるようになり、現在では血液透析だけでなくOn-line HDF(血液透析濾過)、On-line
HF(血液濾過)、持続緩徐式血液浄化(CHDF)、アフェレシス療法なども積極的に行っています。人工腎部では医師、看護師、臨床工学技士が連携し、当院で入院加療される患者様が入院期間中の血液浄化療法を安心して受けられるよう努めています。臨床工学技士は常時3名が従事し、血液浄化療法に関わる機器の操作、保守点検業務、医療材料の管理、透析液清浄化などの業務を行っています。次に我々が行っている業務の一部を紹介します。
<透析液清浄化とOn-line HDF, On-line HF> 私たちは徹底した透析液の清浄化を信念としています。透析液は1分間に500mlの速度でダイアライザーを流れ、1回の平均透析時間である4時間では合計120Lもの透析液がダイアライザーを流れることとなります。透析液はダイアライザーを介して血液と触れているため、透析液の清浄度が透析治療に及ぼす影響が大きいことは言うまでもありません。人工腎部は、わが国で初めて細菌学教室との共同研究において透析膜からエンドトキシン様物質が溶出することを確認し、平成2年から透析液中のエンドトキシン濃度を測定しはじめ、透析患者の抗エンドトキシン抗体が上昇することで人体に悪影響を与えていることを明らかにしてきました。現在では、透析液を清浄化することで手根管症候群の発生頻度の減少、血清β2-ミクログロブリン濃度の低下、血清CRP値の減少、血清アルブミン値の上昇、貧血の改善など様々な臨床効果が明らかにされています。人工腎部では平成10年からOn-line
HDFなどの治療も施行しています。On-line HDFとは、透析液を補充液として血液中に注入しそれと同量の除水を行う血液透析濾過法です。On-line
HDFは通常の血液透析では除去が困難な物質(β2ミクログロブリンなど)を積極的に除去することができ、透析アミロイド症、イライラ、不眠、食欲不振、貧血などの改善効果が期待されます。ただし、透析液を直接血液中に注入するため、厳密に水質管理された透析液を使用することが必須となります。このような観点からも、透析液の清浄化は必要不可欠であります。臨床工学技士は透析液作成システムをバリデートし、透析液水質検査(エンドトキシン濃度測定、生菌培養)を行うことで、関連学会の定める透析液水質基準を満たした超純粋透析液を供給しています。
<アクセス評価>
人工腎部にて透析を行っている患者に対し、アクセス評価を行っています。再循環率や心拍出量の測定、エコーによるフローボリュームの測定や形態評価を実施しています。それらのデータを用いて人工腎部医師、看護師、臨床工学技士によるカンファレンスを行い、情報共有を行っています。
<アフェレシス療法>
アフェレシスはギリシャ語で分離を意味する言葉に由来しており、血液を体から取り出し、血液中の病因物質を除去して体に戻すという治療を指します。除去する対象の病因物質により血液浄化装置、膜やカラムなどの医療材料の使い分けが必要であり、濾過、吸着、遠心といった方法を用いて物理的、化学的に血液を分画し、できるかぎり選択的に病因物質を除去します。対象疾患は、自己免疫疾患、腎疾患、肝疾患、血液疾患、ABO不適合腎移植、敗血症など多岐にわたります。人工腎部ではエンドトキシン吸着(PMX)、白血球除去療法(LCAP/GCAP)、単純血漿交換(PE)、選択的血漿交換(SePE)、遠心分離法血漿交換療法(TPE)、二重濾過血漿交換療法(DFPP)、LDL吸着、腹水濾過濃縮(CART)などのアフェレシス療法を施行しています。アフェレシス療法は主に臨床工学技士が治療を担当しており、各科の医師、人工腎部医師、看護師とカンファレンスを行い、情報を共有することで最善の治療を提供できる体制を整えています。